ひきこもり備忘録

これってこういうことなのかな?と勝手に思って1人で楽しんでいます。

短編小説『ミリアム』を読んだ

タイトル:ミリアム
原題:Miriam
著者:トルーマン・カポーティ
訳:川本三郎
新潮文庫「夜の樹」収録

あらすじ:孤独な老女の前にミリアムと名乗る少女が現れる。ミリアムは老女のもとに度々やってきては老女の生活を掻き乱してゆく。

 

新潮文庫の短編集「夜の樹」に収録された1作です。私が初めて読むカポーティさんでもあります。

ジャンル分けするならこのお話はサイコホラーだと思いました。主人公の孤独にまつわる絶望感を、「ミリアム」という厄介なキャラクターで表現されています。

孤独には意図せずネガティブな感覚が常に付き纏ってきます。不安感、閉塞感、逼迫感、恐怖感、不快感など。これらを一気にもたらすミリアムは、幼い少女の姿をしています。無垢な子供の姿で悪感情をもたらす彼女は主人公の負の感情の化身でもあるので、主人公と同じ名前を持っています。

一瞬でも孤独ではない経験を持てば、どんなに覚悟をしていようとも不安を感じる時が来ると思います。主人公のミリアムには結婚の経験(誰かと長らく暮らした経験)もありますし、尚の事。これはある日突然やってきて(必ず原因があり、予兆もあるが)、どんなことをしても気を紛らわしても己から離れることはない、おそらくずっと…という絶望。
少女のミリアムに声をかけたことは主人公の耐えれていた孤独の状態が決壊する予兆でもあった。それからはもう、おそらくずっと、主人公の傍に現れ(発症し)続けるのでしょう。

己で打開策を講じても失敗する。1人では抱えきれなくなって誰かに助けを求めようとするも誰もが主人公に対しては無関心なので、何の解決にも繋がらず、むしろより追い詰められる結果となる。
他人に助けを求めるも失敗した主人公は、己を落ち着かせます。自分を落ち着かせてくれるものを思い出して、二度とミリアムを訪れさせない為に己の精神面に働きかけましたが、その甲斐虚しく、ミリアムはそれでもやって来ました。おそれを振り払おうとしてみるも、こちらに意図せずそれらはやって来て、感情を蹂躙していくのです。

Wikipediaによると、カポーティさんが19歳の頃にこの小説が雑誌に掲載されたのだそうです。どうしようもない孤独と、これがずっと続くのかもしれないという絶望を、20代にもならないうちに感じていたのかもしれないなと思いました。